2019年4月に、一般社団法人日本ブランド経営学会の設立カンファレンスが開催されました。
これをもって、日本ブランド経営学会が公式に活動を始動。
日本ブランド経営学会はこれまでにもサロン活動を通じて日本の企業経営に、ブランディングの観点から改革を提言してきました。一般社団法人としての設立を境に、活動のさらなる具体化に期待がかかります。
設立に際して、日本ブランド経営学会から発行されたのが、学会の設立趣旨書とでも言うべき「日本ブランド経営宣言」です。1人の手によるものではなく、学会メンバーそれぞれの考え方が反映されています。
日本ブランド経営宣言は、下記からダウンロードすることができます。
今回は、「日本ブランド経営宣言」の中身を読み解いていきます。「ブランディングについて一緒に考える仲間がほしい!」と思っている皆様が、日本ブランド経営学会を覗いてみようと思うきっかけになれば幸いです。
実際の経営課題から問題提起。実証や実践もカバー。
始めに、日本ブランド経営宣言の構成を見てみます。
1〜6では、問題提起。
7〜10では、ブランド経営の有効性。
11〜12では、「言葉」と「デザイン」の重要性。
13では、ブランド経営の現実性を実証するために、学会メンバーの実践と紐付けています。
14・15では、ブランド経営の普及のために、ブランド経営学会が何をするのかを説明しています。
ブランディングを「プロモーションの一手法」として捉えていた場合には、新たな理論の潮流に気づくきっかけになる内容になっています。
【日本ブランド経営宣言の章立て】
1.経営を取り巻く課題
2.ブランディング、日本と世界
3.ブランドが経営に及ぼす影響
4.ブランドとは何か
5.ブランドと経営の歴史
6.現代と未来におけるブランド経営の重要性
7.ブランド経営の投資効果
8.ブランド経営の定義
9.ブランド経営の実践
10.ブランド経営の実証
11.言葉とブランド
12デ ザ イ ン と ブ ラ ンド
13.私のブランド経営宣言①〜④
14.日本ブランド経営学会【設立趣旨】
15.日本ブランド経営学会【理念体系】
【1〜6】ブランド経営が必要とされる背景とは?:問題の整理
インターブランド社のグローバルブランドランキングの上位企業を参照して、日本企業のブランドが評価されていないことを、問題提起しています。特に、下記の要素が欠けているため、日本企業のブランドが評価されていないとしています。
ブランドの根幹を為す「ブランド力」に関する知見について、ブランド経営学会が貢献することが明言されています。
次に、ブランド力が欠けている根底には、「ブランド」という概念の理解不足を日本企業について指摘。表では、次のように整理されています。
一方で、企業経営に関わる方としては、「他にも経営課題はある」と思われるのではないでしょうか?この問に対する回答は、3章〜6章で為されています。
3章では、ブランド経営がもたらすポジティブな影響を「類似商品・サービスとの価格競争に巻き込まれずに収益を向上させることや、社内部署間の壁を越えた一貫したコミュニケーションの実現へと導いていく。」としています。
4章では、ブランドとはプロモーションや販売促進など具体的な施策の成果物ではなく、「生活者一人ひとりの心の中に起こる極めて個人的な感情作用から成る集合知である。」と定義し、一部署ではなく、経営課題としてブランディングに取り組む必要性を説明しています。この定義は、5章にて歴史的経緯のなかで実証されています。
そして6章ではブランド経営が、特に「差別化」や「人材」といった会社の未来を担う領域に影響をもたらすことから、遠大な視野で企業経営に取り組むのであればブランド経営が必要なことが述べられています。
つまり、今をよりよくするためだけでなく未来をよりよくするために、経営課題としてブランディングに取り組む必要性があると言えるようです。「ブランディングに取り組めば、今期の業績にとって、どれ程プラスになる?」と思っていた方にとっては、センセーショナルな内容です。
【7〜10】ブランド経営はなぜ未来に利く?
7章では、「ブランディング=費用」ではなく「ブランディング=投資」だと位置づけています。
さらに8章で、「なぜ、ブランドが投資なのか?」ということを掘り下げていき、「ブランドによるマネジメント=ブランド経営」を提言しています。「ブランド=その企業らしさ」であり、”らしさ”をマネジメントすることは企業の活動そのものをマネジメントすることなので、企業全体に対する投資効果が望めることが言えそうです。
ブランド経営の実践が効果的に為されるために必要な要素は、実証的に述べられていきます。
まず、「理念」が「戦略」を通って「現場」と紐付く「タテの一貫性」が、未来に貢献する施策をもたらし、「ヨコの一貫性」というべき組織内でのブランドに関する統一見解が、施策の効果を実現するとしています。
10章では、理念と現場が紐付くことが、「なぜ、未来の業績に影響を及ぼすのか」という問に対して、論文を引用して実証的な解答をしています。
ブランド経営の実践にあたっては、社内調整が必要になることもあるでしょう。それに際して、有用な原典となり得る構成です。
【11・12】言葉とデザインの意義を拡張
ここまでにおいてブランド経営とは、「具体的な施策というよりも総体的な考え方」という趣旨が伝わってきますが、言葉やデザインといった要素が重要なことは、従来的なブランディングについての考え方同様です。ただ、捉え方がさらに拡張されています。
まず、理念をあらわす「言葉」は、行動をおよびコミュニケーションの軸として、ブランド経営を実現するうえで不可欠な「仕組み」とされています。確かに、理念に裏打ちされた戦略を実行するのは、現場=人です。人同士は、コミュニケーションなくして意思疎通は出来ず、言葉はコミュニケーションのうえで最重要の要素です。
次に、デザインは「想い」の象徴とされています。言葉とは異なる感覚から「想い」を共有するうえで、デザインは有効だとされています。「印象を良くすることがデザインの役目」という捉え方とは、一線を画する考え方です。
【13】ブランド経営の実践は既に始まっている
13章では4ページにわたって、学会メンバーが実践しているブランディングの背景にある考え方が紹介されています。
営業・総務・クリエイティブ・管理職など、さまざまな立場や表現方法がうかがえる内容です。ブランディングの関係者は、宣伝や広報といった一部の部署だけではない現状が明らかになっています。
「社員の経営意識」というのは、企業改革のひとつのテーマですが、部署をこえて考え方を共有することが施策の一側面として言えるブランド経営は、社員の経営意識を全社的に育む施策だということも言えそうです。
【14・15】日本ブランド経営学会は何故設立され、何を目指す?
14章では、ブランド経営はブランドだけでなく「魂を磨く」とし、それが無くては「死を待つのみ」と語られています。ブランド経営学会の設立には、メンバーの切実な日本企業に対する想いがよく伝わってきます。
15章では、ブランド経営のコアとなるビジョン・ミッション・バリュー・行動指針といった「言葉」が定義されています。言葉が行動やコミュニケーションを左右するという基本的な考え方を、まずは提唱者から実践するという気概がうかがえます。
まずは一読を。イベント参加で深まる理解
ブランディングを経営課題として捉え直す。新たな理論の潮流が日本ブランド経営宣言からは伝わってきます。これまでブランディングについて、真正面から考える機会がなかったという方も、まずは日本ブランド経営宣言を一読してみると、経営課題の新たな突破口が見つかるかも知れません。
「一読してもよく分からない。でも、興味はある」という方は、日本ブランド経営学会サロンへの参加がおすすめです。ブランド経営は、理論から生まれた理論ではなく、実践から生まれた実践のための理論です。最新の事例によるアップデートが不可欠なのです。
日本ブランド経営学会サロンには、ブランディングと向き合い、ブランド経営を実践するための仲間が集まっているので、ブランド経営の理解を深化させるためにはうってつけの場所です。まずは一度足を運んでみてはいかがでしょう。
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