ライターの長尾です。今まさに未曾有の人材不足の時代が、日本のビジネスを揺るがしています。そのため、各社が有望な人材を雇用するために、鎬を削っている最中です。読者のなかにも、そうした企業の経営者様がいらっしゃると思います。
しかし、「新卒は3年で辞める」という問題も嘆かれ始めてから、久しくなりました。人材不足と早期離職。このダブルパンチに、日本の採用担当者は悩んでいるところでしょう。
このような日本の採用市場の状況下、「活躍人材の採用と定着」で成果を挙げている株式会社テイクアクションが、当サイトことブランド・シキンキングを運営するむすび株式会社と合同セミナーを開催するとのことで、早速セミナーを取材してきました。
セミナーのタイトルは、「定着しない採用は止めましょう」です。
「採用」から「定着」まで一貫して学ぶことのできる中身の濃いセミナー。様々な企業の採用担当者が100名近く集まっていました。
「確率論」で採用できなくなった!採用の最前線をテイクアクションが語る
テイクアクションのセミナーでは重要な目新しいキーワードが紹介されました。
プレゼンターは、テイクアクションの社長の成田靖也さんです。
▲株式会社テイクアクションの社長の成田靖也さん
①エントリーマネジメント
セミナーの初っ端で登場したエンゲージマネジメントというキーワード。まだ聞きなれない方もいらっしゃると思いますが、私は「採用活動において労働者に伝わるメッセージを管理すること」だと理解しました。
なぜ、エントリーマネジメントが重要なのか。このことを成田さんは次のように説明してくれました。
「採用活動に関わる人間として、311の震災以降、”潮の目”が変わったと感じています。これまでは給与などの条件面で採用できていました。しかし、今では、社会的意義が伝わらないと採用できなくなっています。社会的意義を伝えるために、必要なことが共感であり、そのために、エントリーマネジメントが重要です」
エントリ―マネジメントでは、自社が採用候補者に対して「理念共感」を求めていることをわかりやすく伝えることが重要です。
例えば、テイクアクションが採用活動に関わる際には、「明るくて素直でコミュニケーション能力がある」というような抽象的な採用者イメージではなく、「先輩にご飯をおごってもらえるような世渡り上手」のように自社を表現する人物像を分かりやすい形にして社内外に対し掲げることを提案しているそうです。
▲エントリーマネージメントの必要性を特に力説。
エントリーマネジメントが画期的なところは、大手採用サイトを用いた採用活動が「確率論」に基づいているのに対して、「共感」に基づいている点です。先述したように、「社会的意義」を労働者が求めている最中で、広告露出を増やす戦略をとっても意味がありません。いたずらに接触する労働者を増やすのではなく、共感してもらえる余地のある人材に着実に共感していってもらうという考え方なのです。
エントリーマネジメントを実践するうえで、テイクアクションでは様々な方策を提案しています。その一例となるのが、次のキーワードです。
②採用ルールブック
採用ルールブックとは、社内のあらゆる人間に共通する、採用活動におけるルールが網羅的に書かれた書籍です。実物を見せてもらいましたが、メモや資料といったレベルではなく、「ブック」と呼ぶのがふさわしいほど、見た目と構成がしっかりとしたものでした。
採用ルールブックをつくることのメリットは、採用活動を標準化することができる点にあります。採用活動の失敗でよくあるのが、ステップを重ねるうちに、様々なポジションの人間から相反するメッセージを採用候補者が受け取ってしまうということです。これでは、一貫性のあるメッセージを伝えられないので、採用候補者が何に共感すればいいのか分かりません。採用ルールブックのように、拠り所となるものがあれば、様々な社歴やポジションの人間が交錯したとしても、メッセージにぶれが生まれません。
③エンゲージメント
ここまで、「採用」に関わるキーワードを紹介してきましたが、「定着」においてはエンゲージメントが大事だと成田さんは語ります。エンゲージメントは、社員の忠誠心や志を示す概念です。従業員満足度(ES)では、社員にとって企業は「与えてくれる存在」ですが、エンゲージメントの概念では、「支え合う関係」となっているのが特徴的です。
成田さんは「エンゲージメントは諦めたら終わり」と語ります。管理職の方にとっては、社員の「忠誠心」や「志」を聞くことは、一歩前に出る勇気が必要なことですが、エンゲージメントの調査自体が、会社の前向きな姿勢を社員に伝えることができます。「会社に悪いところなら、一緒に良くしよう」という姿勢が伝わるということです。
エンゲージメントは簡単なアクションで向上させることができます。「自社らしい福利厚生をつくる」ということが一例として挙げられました。自社らしい福利厚生をつくることで、自社が大切にしていることが伝わるのです。とはいえ、新たに福利厚生をつくるのは現実的ではありません。まずは「名前を変える」だけでも、効果的だそうです。
▲テイクアクションでは社内表彰の様子を記録して内外に発信している。
例えば、それまでに社内表彰制度があったとするならば、「○○アワード」という風に、表彰の意義と重要性が伝わるように、名前を変えてみるということです。
「採用」と「定着」の好循環を創り出そう
▲むすび株式会社の社長の深澤了さん
セミナーでは、むすび株式会社の代表の深澤さんも登壇。雑誌連載や書籍を通じて、昨今に注目されている「採用ブランディング」を解説してくれました。採用ブランディングについては、下記をご参照ください。
このセミナーを通じて、人材の「採用」と「定着」は相互依存の関係にあることがわかりました。「共感」をベースにした採用をすれば、「定着」が進みますし、「定着」を進めていけば「採用」も上手くいくようになります。人材における好循環を期待するなら、「採用」と「定着」を一貫して一緒に考えてくれる企業を採用におけるパートナーに選ぶべきなのでしょう。
取材/撮影:長尾和也
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