株式会社クエストリー 代表取締役 櫻田弘文
小さくても勝てるブランディングの真髄 第4回<最終回>
「店がブランドになる」ことを支援・プロデュースする株式会社クエストリーは、中小企業に眠っている価値を見つけ、育て、仕組みにして、伝えるところまでをサポートしている。解釈が多様であり曖昧とも言えるブランディングのプロセスを分かりやすく整理し、成果につなげてきた櫻田氏に、ブランド構築のための秘訣を訊いた。
聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
ミッションが大事であるという文化をつくりたい。
ミッションを各社員が自分事化するのは難しいです。
そのミッションに感化していくことですね。たとえば、決定したミッションを朝のミーティングで10分間解釈していくとか。昨日の仕事に照らし合わせたらこうだったとか。そんなふうに感化できる環境を地道につくっていくことが大切だと思います。その積み重ねで、みんなが主体的に判断していけるようになっていきます。ワークショップに参加したコアメンバーが社内の伝道師となり、僕らの手から離れたあとも自主的にやっていくことができれば、それが文化になっていきますし、社風をつくっていくことにつながります。ミッションが大事であるという文化を作っていくことも私たちの仕事だと考えています。その意味でも、ワークショップの役割はやっぱり大きい。経営者は悩んでいますし、業績が下がれば迷うものです。でもそれを、社員はもちろん同業の人にも相談しづらいですよね。だからこそ、私たちと席を並べて課題と向き合うことでヒントが見つかるんです。
ターゲットの明確化は排除することではない。
経営者の中には売上を気にしてターゲットを明確にすることを嫌う方もいます。
市場を持っているところであれば、コアターゲットを明確にしてもボリュームはありますよね。それほどマーケットが大きくないのであれば富士山型が良いと思います。つまり、頂きを高くしていければみんなが見えるようになり、注目されるようになります。北海道でブランド塾を行なった時に、ターゲットを絞ると売上が落ちるという話をされたことがあります。でも、ターゲットを明確にすることは、その人たちしか相手にしないということでは決してありません。全方位でやっても薄まるだけで、資金力、人材力、情報力がない企業はただただ疲弊していくだけになってしまいます。中小企業はそれではいけません。大手と違うこと、大手ができないことをすることが大切。ミッションをコア(頂点)にしてターゲットを明確に決めていく。商品自体にしても、売り方にしても、ターゲットは明確な方がいい。排除するという考え方ではなく、明確化することで磨きをかけるという発想に立つことが重要ですね。
正解は外にはない。常に内側にある。
他社の成功事例を意識する経営者も多いです。
たとえば正解を求めて、他社の成功事例を真似してもうまくいくとは限りません。正解は常に内側にあるんです。よそから持ってくるのではなく、自分で作るからこそ信じられるし、それが正解になる。大手がやっていることを真似しても意味がありません。ミッションは、自分たちの正解を形にしていくことだと考えています。 たとえば僕らは3+5=8と教わっていますが、8という答えを導き出すのは1+7でもいいわけです。この8という数字がお客様に喜んでいただくための結果であるならば、そこへのたどり着き方は1つではありません。自分たちでプロセスをつくっていくというのはそういうことです。他社の成功の真似ではなく、プロセスを突き詰めて考えていく姿勢が何より大切ですね。たとえば原価が100円のものを、200円で売ってもいいし、1000円で売ってもいい。その利益の部分がブランドの価値なわけです。そこを作るのがブランディングです。でもブランド力があれば、売値を上げていくことだってできます。ファンに価値を認められ、ファンとつながっていく。その関係性をつくることこそブランディングの真髄だと思います。
(おわり)
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