株式会社クエストリー 代表取締役 櫻田弘文
【小さくても勝てるブランディングの真髄 第2回】
「店がブランドになる」ことを支援・プロデュースする株式会社クエストリーは、中小企業に眠っている価値を見つけ、育て、仕組みにして、伝えるところまでをサポートしている。解釈が多様であり曖昧とも言えるブランディングのプロセスを分かりやすく整理し、成果につなげてきた櫻田氏に、ブランド構築のための秘訣を訊いた。
聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
新しい価値に変換できるものはあるか。
前回、価値のタネを探すというお話がありましたが、価値のタネはすぐに見つかるものなのでしょうか。
価値のタネは、どの会社でも500〜600くらいは見つかります。出揃ったところで一度それらを整理して、その中から本当に強い価値は何かを考え、絞っていく作業をします。条件は、唯一無二のものかどうか。でも、実際そういったものはほとんどありません。だから、新しい価値として変換できるものをセレクトしていきます。唯一無二に近いものだけど、マニアック過ぎて大きな価値にはつながらないものもあります。ワークショップをやりながら、「1.唯一無二」「2.市場性」「3.マニアック」これらを考慮した上で1本に絞っていきます。ワークショップのプロセス全体が、実は浸透の場でもあるので、社員のみなさんが自分たちで絞り込んでいくことを大切にしていますね。そうすることで、そのお店のコンセプトやカルチャーにつながる土壌ができていくんです。これは早くて3ヶ月、長くて半年から8ヶ月くらいかかりますね。その間に10〜15回くらいのワークショップを実施します。
苦労して見つけた種だからこそ価値がある。
正解がない中で全員が納得感を得るにはどうしたらよいのでしょうか。
自分たちで正解と思えたのが正解。だから、相手に答えを出してもらうことが大切になります。それには手間と時間とエネルギーがとても必要です。ただ、全10回のワークショップの末に手に入れたものはとても貴重です。参加した皆さんが自分自身でたどり着いたものだけに自信が持てるのです。それは一つの喜びと言ってもいい。みんなでタネを見つけて、みんなで育てていくというイメージです。経営者はせっかちな方も多いですし、自分に近い温度にならないと納得いかないという方も多いです。でも、社員の中にやる気がない人はいません。熱さを表に出す人かそうでないかの差でしかない。ワークショップは、無理にモチベーションを上げる必要はありませんが、誰もがしっかりと自分の意見を言える場でなければいけません。その意味で、ワークショップの中にアイスブレイクをいれるように心がけています。そうすると場が馴染むんです。1円玉の大きさを書いてくださいとか、ジャンケンをやってみましょうとか。どうしても決定に対して納得していない人が出てくるものですが、多数決で切り捨てられない部分もあるので、決まらなければ延長線で、とことん話し合うことを大切にしています。
決まったものは共有しないと意味がない。
ワークショップに参加してない人への浸透はどうすべきでしょうか。
ワークショップを実施する上で、理想のメンバー数は7人までですね。一度にできる人数としてはそれくらいがちょうどいいです。部門がいくつかあるところや多店舗展開しているようなところでは、15人で行なったこともありますが、その時はいくつかのグループに分けて進めました。たとえば社員が30人いたとしたら、全員は参加できませんので、コアメンバーでやらざるをえません。そうなると決まったものを報告して、理解してもらうことが必要になります。ミッション通信を出したり、社内リリースを出したり、ニュースレターを出したりしながら経過を社内にフィードバックする。当然、メンバーではない人の意見をワークショップに持ち寄ってもらうことも大切です。そして、最後はやっぱり社長ですね。経営者の温度が上がっていくことがなにより大事です。経営者のみなさんはミーティングをやるために一生懸命勉強してきています。それこそ本を読んだり、誰かの話を聴いたり。そんな風に、経営者が一番勉強している状態はすごく大切だと思います。
(第3回は4/23(月)に更新します。)
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