株式会社クエストリー 代表取締役 櫻田弘文
小さくても勝てるブランディングの真髄 第1回
「店がブランドになる」ことを支援・プロデュースする株式会社クエストリーは、中小企業に眠っている価値を見つけ、育て、仕組みにして、伝えるところまでをサポートしている。解釈が多様であり曖昧とも言えるブランディングのプロセスを分かりやすく整理し、成果につなげてきた櫻田氏に、ブランド構築のための秘訣を訊いた。
聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
低予算でも、みんながハッピーになる方法はある。
ブランディングに目を向けたキッカケを教えてください。
大学を卒業して、プロモーション系の会社に就職し、広告の制作やプランニング、マーケティング、店舗開発などに携りました。業務に関わる中で、販促のプロモーションに限界を感じていたんです。同じような企画やプロモ―ションを展開しても、その企業によって明らかな差が出る。その差を生じさせているものこそ、「ブランド」なのではないかと考えていました。本当はそこを突き詰めたかったのですが、売上や集客など常に成果を求められる。でも、いきなりそれを追求するのは矛盾ではないかと思ったんです。当時、ブランディングといえば代理店がやるものでしたが、私が販促をやっていた頃は、経営者や幹部と直接話ができました。だから、その企業の考え方や歴史的背景などを聞けるチャンスがあったんです。必ずしも予算をかけなくても、お客様から喜ばれ、社員もハッピーになる方法はある。販促は、短期的に結果を出すためのもの。ブランディングは儲かり続ける仕組みをつくること。どの企業もコストはかけられない中で、安定的に売上を上げていくためには、ブランド構築が不可欠だと感じたんです。
ブランディングで会社の芯棒をつくる。
ブランディングの会社を設立することに不安はありませんでしたか?
2000年にフリーになり、事務所を構えて法人化したのが2003年です。当時は周りから理解されませんでした。ブランディングは大手企業が考えることであり、海外の商品や知名度の高いものを指すという認識がほとんどでした。中小企業とブランディングなんて全然つながらない状況。それが、リーマン・ショック、東日本大震災のあたりから潮目が変わっていきました。中小企業は技術だけではどうにもならない状況になり、そう感じる人も増えてきた。それまでは、大手の下請けとか、OEMでやっていけば安泰だと思っていた人も多かったと思います。プロモーションの会社にいたころは、ジュエリーの仕事が多かったんですが、販売の手法が催事やイベントだったので、ブランディングは難しいと思っていました。そんな中、9年ほど前に両国にあるちゃんこ料理のお店から相談を受けたんです。先代の社長が亡くなり、奥様が社長に就任。先代はいわば会社の芯棒だったんですが、その芯棒がなくなってしまった。会社って芯棒がものすごく大事ですから、そういったことも含めて相談されたんです。
まずはお互いの“温度合わせ”から。
ブランディングは人によって解釈が違うこともありますが、まず何から始めるのでしょうか。
ブランディングのことをある程度理解して依頼されることが多いですが、最初は温度合わせをします。ブランドの概念はあやふやで、独りよがりのことが多いので、まずはブランディングの勉強会をやるんです。そうすることで、お互いの温度が合ってくる。たとえばですが、香川県の家具専門店のお客様の例で言えば、会社のスローガンが社員に定着しておらず、単なるキャッチフレーズになってしまっていると相談がありました。そこでまず勉強会を開いて、ブランドとは何かについて話をしました。そしてカルチャーとは何かを解説し、言葉で方向を決めていくために「OKワード・NGワード」を決めていきました。いわゆるブランドを理解するための形式的なワークショップは実はあまり意味がありません。自分の会社に落とし込んで理解できることが何より大切です。その時にヒアリングをして、そのお店が持っている価値の種を探す。自分たちで気づけていない価値や優位性、気づいているのにそもそも価値だと思えていなかったことを探し出します。そこに改めて気づけたときは、温度がぐっと上がりますね。
(第2回は4/16(月)に更新します。)
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