統一ブランドをつくるとすれば。
まだまだ有機低農薬野菜を食べる人は少ない。
さて、業界再編を目指して(と思われる)オイシックスの相次ぐ合併、買収ですが、ブランド論的に考えれば、矢継ぎ早に行ったこの再編で、「Oisix」、「大地を守る会」、「らでぃっしゅぼーや」とこの3ブランドの展開を今後どうしていくのか?ということに焦点があたってきます。
市場的に考えれば、プレイヤーはこれでほぼパルシステムとオイシックスドット大地のみになり、2000億円規模の市場を取り合うことになります。オイシックスがなぜ業界再編を行ったのか、という理由のひとつにこの「市場の狭さ」があると思います。プレイヤーが減れば、この少ない市場を取り合うことはないのでひとまず安心。そして合併することで、競争力を増し、市場を一気に広めていこうという作戦でしょう。
少し前のデータですが、2012年にベルメゾンデッセが行った調査で、20代以上の女性で「ふだん有機野菜を購入していますか?」という問いに購入していると回答したのはたった「6.2%」。この6.2%の人たちが中心になって、2000億円の市場をつくっていると考えれば、ヘビーユーザーの人たちによって支えられていた市場であるとも言えるでしょう。
また、これも少し古いデータですが、2009年に農林水産省が「有機農業の推進について」という調査を行っていますが、全国で有機農業を行う人は増えてはいるものの、当時で5600人しかいないことがわかっています。
つまり、早急に例えばオイシックスがブランドと統一したとすると、これまでの根強いそれぞれのブランドのファンが強い抵抗感を起こす可能性があると考えるべきでしょう。だからこそ、オイシックスも大地と経営統合しても、今もまだ2つのブランドを続けています。また、それぞれのブランドの安全基準を見ると、大地が15Pほど割いているのに対し、らでぃっしゅぼーやが9P、Oisixが3Pと、よく言われるように、「大地」と「らでぃっしゅぼーや」の基準の厳しさが伺えます。
さらに、有機農法を行う農家はどこも個性が強いゆえ、ブランドがなくなると取引を止めてしまう可能性を考えられます。だからこそ慎重に運ばねばならないでしょう。
経営戦略的に見れば、もともと安全基準の厳しい「大地」や「らでぃっしゅぼーや」の野菜を、Oisixのマーケティング力で売る、という方法が一番手っ取り早いように思えます。しかし、有機低農薬野菜の消費拡大を目指すのであれば、別名の3ブランド展開はわかりにくさを感じさせてしまいがちです。そもそも20代以上の女性の6.2%しか使用していないのですから。またそれぞれのブランドでプロモーション展開を行ったとしても、カニバリを起こしてしまう可能性も高くなるでしょう。
そう考えれば、統一ブランドのもとに、それぞれの特徴を残しつつ拡張した3ブランドを展開する方法も考えるべきでしょう。
例)
Oisix-Radish:厳しい基準を突破した高品質のもの
Oisix:これまでのOisix基準のもの。
Oisix-Daichi:利益の一部が自然を守る活動に使われる
なども考えられるでしょう。こうすれば、Oisixお得意のプロモーションの強みも出てきます。統合したからには、有機低農薬野菜の拡大を視野に入れているでしょうから、今はじっくり3ブランドのコンセンサスをとりながら、いずれこのような形態へと変化していくのではないか、と考えられます。
次回は統一ブランドをつくらない可能性について言及したいと思います。
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