事例はどこまで行っても事例。
大企業の事例が参考にならない訳。
つい先日、とあるセミナーに出てみたのですが、誰でも知っている某企業のプロモーション担当方が一生懸命、自社のプロモーションで何をやったのか、どんな効果があったのかを説明してくださいました。しかし、ああいうセミナー的なところでの大企業の事例はあまり参考にならないと思っています。
なぜなら、
・予算規模が違いすぎる
・情報に緻密性がない(あたりさわりのない情報)
という面があって、事例を見るなら、その事例からもしくは複数の事例から何が言えそうなのか(=法則性)というところまでわからないと、汎用性がないと思うんですね。なのでセミナーを聞いても「そりゃ御社だからできるんでしょう…」となるか事例だけ聞いて、とっても充実した気になるかどちらかだと思うのです。後者の気持ちになるのは学生か社会人の経験が浅い人なのではないでしょうか。
さて、ブランディングとかマーケティングの事例というのは、巷にたくさん溢れていて、いろんなものを求めて情報収集している人もいると思うのですが、正直、事例ばかり見てもあまり意味が無いと思っています。例えば、プロモーションの事例というのは、言い換えれば、戦術であり、ひとつの方法なわけです。その企業やブランドによって課題は違うわけで、課題や状況が違えば、取りうる戦術の組み合わせは変わってしかるべきですよね。
ということは、軸になるコンセプトも違うわけで、事例を聞くのであれば、
①どんな社内外の課題があって、
②どんなリソース(強み)を活かそうと思って、
③誰に対して(=ターゲット)、
④どんなふうに伝えていったのか(=コンセプト)
⑤伝え方の組み合わせはなんなのか(=使用媒体など)
⑥結果、どうだったのか
このあたりを聴けないと、自社に当てはめることはできないとなります。聞く場合、マーケティング・コミュニケーションやブランド・コミュニケーション論の視点で事例を読み解く必要があるということです。
X-YZモデルは、コミュニケーションの基本。
ロシター/パーシー(2000)『ブランド・コミュニケーションの理論と実際』には、優れたコミュニケーションをするためのX-YZモデルというのが紹介されています。
X はそのブランドが、どのカテゴリー(市場)に属するのかを規定し、
Y はユーザー、Z はユーザーにとってのベネフィットを意味します。
つまりこれら全体で、そのブランドがどの市場に属するもので、どんなユーザーに、どのようなベネフィットを提供するのか、がわかる構造になっているのです。当たり前といえば、当たり前の話なのですが、こういう基本を忘れた仕事というのは、結構起こりがちではないかと思っています。
クライアント「なんかかっこいいの、つくってよ」
制作側「わかりました!」
という曖昧な発注に陥りがちな現場がよくあるのですが、この場合、制作側が意気揚々と作ってきた案が「なんか違う」ということで一蹴され、修正の泥沼にハマることがあります。私も若い頃はありました。でも業界的には多いと思います。このあたりは、プロモーションをつくる側が、しっかりコントロールしないといけませんよね。プロなんですから。
ちなみに、私も最近、セミナーなどで話をする機会を頂くことが増えているのですが、基本的に上記に挙げたところを踏まえるようにしています。そもそも情報の出し惜しみはしないと決めています。そうでなければセミナーなんて、出ないほうがいいでしょう。私の場合は「ブランドの理論をインフラ化する」と決めていますから、そういう機会があれば喜んで出させていただいております。
大企業のみなさまも、ぜひ勇気を持ってこのあたりを話して欲しいですね。個別の事例なんて、そうそうマネされませんし、できませんから。
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