カテゴリーをつくって、そこでナンバーワンになるが究極。
完全競争とは、つまりコモディティ化。
早稲田大学ビジネス・スクールに通っている頃、「世界的なビジネス・スクールで、経済学をコア科目にしていない学校はない」と言われました。入山先生の経済学の授業はとても分かりやすかったのを覚えています。ちなみにDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューでの連載、「世界標準の経営理論」がとてもわかりやすく、勉強になります。
さて、ブランドの理論と経済学には共通項がたくさんあります。
学問としては経済学のほうが圧倒的に古いですし、研究や理論化も進んでいますから、経済学のほうが大センパイ。ブランド論だけの話じゃないですが、経済学が基盤となっていることは間違いない、と思うことはたくさんあります。
経済学には、完全競争と独占という考え方があります。
完全競争は、無数に生産者と消費者がいて、市場への参入が自由で、品質に差はなく、生産者と消費者の間に情報の格差がない状態のことを言います。この場合、需要と供給のバランスは一致しますので、価格は自然と決定されます(つまり誰も価格を決められない)。
独占は市場に1社しか存在しないということです。つまり参入ができず(法に守られているect…)、品質はひとつだけ、生産者が圧倒的に情報を持っている状態。利潤が最大化するように、いくらでも生産量を調整できるので、生産量に応じて、価格が決まります。実際には経済学で考えられている完全競争状態は起こりえませんが、似たようなことはいつも起こります。
例えば、15年位前に牛丼の価格競争が起こりました。吉野家、松屋、すき家..こぞって牛丼の値下げが始まりました。牛丼を食べたい消費者と牛丼を供給する店がたくさんあって、だからこそ、消費者側にも情報が多い。…そういえば、「ねぎだく」とか「カシラ大盛」とかそういうワードが出始めた頃です。ポイントは、品質にそれほど大きな差がなかったことでしょうか。(厳密にはありましたけどね。ちなみに私は松屋派でしたね…)こういう状況になると、消費者の熾烈な奪い合いになりますから、価格がどんどん下がっていきます。 これは、マーケティングで言うところの、「コモディティ化」という考え方の土台になっていると思われます。コモディティ化は、品質に差がなくなると、価格競争に陥る、という理論でした。
規制産業は独占状態になりやすいが、すべての産業が規制で守られるわけではない。
独占は、わかりやすいです。電気も電話も参入は自由化されましたが、例えば、東京電力やNTTが近いですね。テレビ局などは、独占ではないですが、複数社あるという意味で「寡占」状態ですね。だから、CMの価格は依然高いままなのです。
独占というと、法律で守られているイメージがありますが、商品やサービスを作る企業側からすると、法律をコントロールすることは出来ませんので、違う方法で「独占状態」をいかにつくるか、が大事なのです。市場で、唯一と思われ、自分たちしか選ばれない状態願わくば自ら喜んで選んでくれる状態をいかにつくるか。ここにブランドの理論が大変、役に立ちます。つまり、ブランドをつくるというのは、究極、市場で独占状態をいかにつくれるか、なのです。
CARTIERやGUCCIがなぜ高いのか。それは市場においてこれらの商品が、「唯一のもの」と認識しているファンがたくさんいるからなのです。ではどのようにして独占状態をつくればいいのか。それには「カテゴリーをつくって、ナンバーワンになれ」と言ったのがアーカー。「ブランドレレバンス」という名前をつけています。
これのわかり易い例がトヨタの「プリウス」。それまで、セダン、ワゴン、SUV…と分かれていたカテゴリーに、エコカーという新しいカテゴリーを提示しました。すぐに他社も追随しましたが、エコカー市場でのナンバーワンはトヨタです。
独占になれば、価格は自分たちで決められます。ブランド化して、価格が高いのは、極めて独自性が高いから。その出発点は「自らの強み」を認識することから始まっていきます。
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