オピニオンリーダーにどうやって届けるか?
ターゲットを明確しないのは、マネージャーたちに勇気が足りないから?
ターゲットを明確化しなさい、というのが、マーケティングの定石になっています。しかし、なかなか多くの企業は、ターゲットを明確化したがりません。ターゲットを明確化するという行為が、自分たちのブランドを手に取る人を減らしてしまうのではないか、と直感的に思うからです。しかし、その思考は間違っています。
ターゲットを明確化することで、社内のターゲット像の認識が一致するので、コミュニケーションに統一感が生まれます。ターゲット像が一致していないと(一致している企業は稀ですが)、広報、マーケティング、営業、PRなど各部署で、訴求にブレが出ます。
ブレが出ると、効率的、効果的にブランドを構築できません。なぜなら、訴求がブレるということは、顧客の頭の中のイメージが、顧客ごとにバラバラになるので、自分たちのブランド・イメージもバラバラになってしまうのです。
一方、ターゲット像が一致していると、各部署で訴求にブレがありません。そして、ターゲットを明確化しているので、より強い訴求ができるようになります。つまり、表現が「際立つ」ことで、結果、目立つのです。これが多くの人に広まる効果を持ちます。表現にブレがないので、顧客の頭の中に、ブランド・イメージが積み重なって、「強くて、好ましくて、ユニーク」なイメージができあがります。
これが、ターゲット像を絞ることの効果です。障壁になっているのは、企業のマネージャーたちの「勇気」だけなのではないでしょうか。
オピニオンリーダーに届くとブランドが長生きしやすい。
さて、このターゲットの議論の中でも、とりわけ重要なのが、「オピニオンリーダーとなりえる人をペルソナ化できるか」です。なぜならば、ブランドの導入期に、なるべく早く、オピニオンリーダーに到達できると、ブランドがロングライフになりやすいという理論があるのです。
興味のある方は、ぜひ早稲田大学ビジネススクールでマーケティング論を教えている永井猛教授の『富と知性のマーケティング戦略』(五絃舎)をお読みになることをオススメいたします。
この理論を簡単に説明しますと、新商品が新市場に導入されて、どのように普及されていくのか、は1962年にロジャースが提唱したいわゆる「イノベーター理論」があります。
革新性をもとにした商品の採用者カテゴリーを
イノベーター(2.5%)
アーリーアダプター(13.5%)
アーリーマジョリティ(34%)
レイトマジョリティ(34%)
ラガード(16%)
と区分けしました。このうち、上位16%のイノベーターとアーリーアダプターに広がることで、急速に広まっていくことを提唱した理論でした。これはご存じの方が多いと思います。
これを、1990年代に、ムーアがITを中心とするハイテク業界で検証し、上位16%とアーリーマジョリティの間には「キャズム」という溝があり、アプローチを変える必要性があることを提唱しました。また、キャズムを越えられたものと、越えられなかったものに分類してます。
結局どっちなんだ、ということですが、ここにオピニオンリーダー論が一石を投じます。オピニオンリーダー論は、昔から研究されてきた跡はあるのですが、商品によってオピニオンリーダーは異なるので、一概に特定できないというとことで終わっていました。
しかし、オピニオンリーダーに対抗する、「ディスオピニオンリーダー」という概念を出すと、上記のロジャースとムーアの議論に一定の答えを見出すことができます。
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オピニオンリーダー:
大衆・オピニオンディスリーダーから見て、
「自分もできるならいつかはああなりたい」とお思われる対象。
オピニオンディスリーダー:
オピニオンリーダー・大衆からみて、「ああはなりたくない」あるいは
「ああはならなくてよかった」と思われる対象
出典:永井猛『富と知性のマーケティング戦略』(五絃舎)2010
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理想のターゲット像を追いかけろ。
つまり、イノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる上位16%に到達できたとしても、オピニオンディスリーダーに到達してしまっては、ブランドの終焉を招きやすくなるのです。そうなると、キャズムを超えられなくなります。
オピニオンリーダーは、そのブランドに文字通り「意見」があるので、勝手に広めてくれます。商品普及の引き金になるのです。例えば、PCの初心者の人がいたとして、誰かに相談しようと思った時に、同じ初心者の人には話をしないでしょう。あの人だ、と頭に思い浮かんだ人、その相談を受ける人こそ、オピニオンリーダーの一人であるのです。
つまり、イノベーターやオピニオンリーダーの中でも、オピニオンリーダーは誰なのか?と特定することが重要で、だとするならば、極めて重要なターゲットを絞るという行為をするときに、自分たちから「特定」していく作業が必要です。
このとき、自分たちの顧客データなどから、詳細に絞ることもできるでしょうが、一番簡単な方法は、データを参考にしながらも(データだけでは絞り込めないと思うので)、仮説ベースでオピニオンリーダーになりえる理想のターゲット像を作り上げてしまうことです。
理想のターゲット像を作り上げ、各部署でコンセンサスを得てコミュニケーションしていくことで、「本当にこの人が来た!」という体験に出会えることができます。それは特定することで、これまで曖昧だったことで、気づけなかったターゲットを見つけやすくなるからなのです。
見つけやすくなると、その人たちへの訴求も具体的に考えやすくなるので、さらに訴求力も上がるという、グッドスパイラルを描くことができるのです。
文:BRAND THINKING編集部/むすび株式会社 代表取締役 深澤 了
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