スタートアップのブランド論対談<オモロキ鎌田武俊>第2回
「ボケて」は2007年からスタートした、お題を出して、それに対してボケ合うユーザー参加型のサイト。アプリは500万DL。これまでの累計ボケ投稿数は5000万に迫る勢いで、お題投稿数も250万以上と、あらゆる人がサイトを訪れ、お題を出し、ボケ合っている。それを運営しているのが、株式会社オモロキ。とてもユニークな価値観を持つ企業だ。ボケてを生み出したオモロキという会社の源泉を、スタートアップのブランディングを多数手がける、パーソナル・ベンチャー・キャピタル代表、チカイケ氏が解き明かす。
聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城
まずは自分が楽しく働けるルールをつくった。
チカイケ:オモロキという社名は、「面白さ」+「驚き」から来ているんですよね?
鎌田:はい。会社名って、メールの署名にも入るし、毎日見るものなので、自分のやりたいこと、好きなことが思い出せる方がいいなあ、と思っていました。
チカイケ:どんな体験からその想いに至ったんでしょうか。
鎌田:もともとは「電波少年」みたいな、ドキュメント・バラエティを作りたかったんです。憧れでした。突拍子もない企画で毎週笑って驚いて。自分にもこんなことができるのかな?考えつくかな?多大な影響を与えてもらいました。そんなわけでずっと、おもしろいもの、驚きがあるもの。笑ってもらえるものを作りたいという気持ちが根底にありました。
チカイケ:「おもしろい」を追求する姿勢は、どのくらい昔からあったんですか。
鎌田:原体験で言うと、男友達と教室の片隅で、話しているのが好きでしたね。前の日のテレビ番組でやっていた芸人さんのネタをマネしたり。替え歌作ったりと、男子3人でお互いに笑いを取り合う感じでした。非常に閉じた世界でしたね(笑)
チカイケ:会社をつくった時に最初にやったことはなんですか。
鎌田:会社って、そこで働く人は、会社のルールで働くようになるんですよね。どんなルールであっても、人は生きるために適応しようとするんですよ。スイカを四角い枠で育てると四角くなるように。でもそれは窮屈だから、自然じゃないから。自分が自然に、働けるルール作りをしようと思いました。そうすれば、仲間を誘うときも、「こんな箱つくったけど、どう?」と、聞けるので。
チカイケ:それはまさに、価値観を整えるってことですよね。
お金との距離をできるだけあけよう。
チカイケ:会社はまず一人でつくったんですか?
鎌田:1人だといつか寂しくて嫌だと思って辞めちゃいそうだな、と思ったんで、誰かとやりたかったんです。それで、CTOの和田さんにまず声をかけました。
チカイケ:和田さんとは大学が一緒ですね。
鎌田:研究室も一緒で、笑いのツボが近かったんですよね。和田さんは研究室ではエース的存在で、面白いし、プロダクトもつくれる。僕はどっちかというと、賑やかし(笑)。
チカイケ:若い時に一緒に会社を立ち上げられる人に出会えるって貴重ですよね。
鎌田:もうお願いするしかないですよね。こちらは何もなくて、ただつくりたい世界はあって。それに和田は当時、お父さんと一緒に鎌倉で会社をやっていたんですから、本当にありがたいですよね。
チカイケ:会社の価値観を決める時に、まず何から考えていきましたか?
鎌田:お金との距離をできるだけあけようとしました。
チカイケ:確かに、企業HPのポリシーのところに、「弊社は社員を増やしません」、「弊社はお金の借り入れをしません」、「企業ではありますが、利潤追求よりも価値提供を最優先します」と、お金絡みのことがたくさん書いてあります。
世の中に価値を提供することを追いかける。
鎌田:例えば、転職しようと思った時に、年収とかって気になるじゃないですか。でもお金って、将来的に何かと交換するためのものですよね。だとすると、莫大にはお金はいらないと思ったんです。近くにいる人たちと気持ちよく生きていきたいというのが、根源的にあって、だとすると、自分のスキルとかそういうもので貢献して、「ありがとう」と言ってくれる時間が、一生続いていけば幸せだなあ、と。
チカイケ:だからあのポリシーにつながるんですね。
鎌田:設立時点からIPOを目指すという経営者は、本当に尊敬します。僕にはなかなか自然にしづらいこと。やりたい事業であっても、投入するお金と時間がなければ、もうこの事業やめようという選択肢も取り得ます。
チカイケ:ベンチャーキャピタルから何億円調達したとか、それが正しいことのように記事になったりしますが、そこから先モメる例はたくさんあります。
鎌田:もちろん上場や売却という経験も得難いものだろうなと思います。鋼のメンタルと屈強な肉体を持ち、立ち向かう姿は自分にはないものですね。
チカイケ:それらを目指す過程で人間関係が崩れる危険性もリアルにありますから。
鎌田:朝令暮改も、変化に対応する上で当然だし。当初から変わってしまったと仲間と袂を分かつこともあると思います。それでもやるんだという強固な意志を持つ経営者はすごいなと思います。色々な企業があって良いんじゃないかと思っています。ひとまず自分に、自然にできる範囲で、そしてできればお金という概念とは遠いところで、価値を提供していきたいと思っています。儲かるからやる、儲からないからやらないという選択肢の狭め方は、しなくて良いようにしていきたいです。
第3回は3/16(木)に公開します。
株式会社オモロキ 代表取締役 鎌田武俊(写真右)
慶應義塾大学総合政策学部卒業。奥出直人研究室でウェブ、映像、デザイン、Flash、DTPからチームマネジメントまで広く学ぶ。大学在学中に六面体映像デバイスの特許を取得。卒業後は日本テレビ放送網株式会社に就職。2007年、オモロキ設立。代表取締役に就任。
パーソナル・ベンチャー・キャピタル 代表 チカイケ秀夫(写真左)
デザイナーの経験を経て、株式会社GMOで新規事業などさまざまな事業を経験。2015年よりパーソナル・ベンチャー・キャピタルの代表として活動開始。スタートアップ企業にブランディングを広めることを使命に、数多くのサポートを行っている。さまざまな企業のチーフ・ブランディング・オフィサー(CBO)を務める。
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