経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

エントランスも、社長の発言も、コンセプトに紐付けろ。

元インターブランドジャパン・現愛知東邦大学教授 上條憲二
【ブランドは社内のエンゲージメントから 第2回】

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ブランディングと言うと、プロモーション面ばかりが注目され、学術的な歴史を見ても、コミュニケーション分野を扱った理論が数多くある。一方で、ブランド・ビジョンを社内に浸透させることの重要性への言及はかなり少ない。しかし、今日のブランド論を形作ったアーカーもまた、「まずは従業員がブランドを演じる存在になれ」と言う。「ブランドは社内のエンゲージメントが重要」と語るのは、広告代理店やインターブランドで、さまざまな企業のプロモーションやブランディングの現場に携わり、現在は愛知東邦大教授の上條憲二氏(写真中央)。編集長の深澤(写真左)と連載を持つチカイケ氏(写真右)が迫った。

 

聴き手・構成:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城

 

社内のブランド・エンゲージメントを高めろ。

深澤:(前回)「さすが◯◯らしい!」と言われるくらいまでやるというお話がありましたが、これこそ社員を巻き込んで考えないと、外部からは考えようがないことですよね。

上條:以前、あるBtoBメーカーのブランディングをしたことがあるのですが、そこでまさに社員のみなさんを巻き込んで考えてもらいました。

チカイケ:どんなふうに進めていったんですか。

上條:表頭に、品質、革新性、サービス力などを置き、表側に部署ごとの自分たちレベル、競合レベル、さすがレベルというマトリクスを用意しました。つまり、品質は自分たちはこのくらい、競合はこのくらい、しかし、「さすが~らしい」と言われるためには、「ここまでやらなくてはならない」ということで、自由に話し合いました。すると、本当にたくさんの「さすが~らしい」のアイデアがでてきました。品質は別に開発の人たちだけの話ではない。直接、製品開発に関わらない部署の人でも、「さすが」と言われるためには何をしたらいいのか、考えました。とにかくいろんな「さすが~らしさ」が出てきました。「たとえ、自分のところの製品でなくても、お客様が困っていることがあったら耳を傾ける」とか。社員のみなさんに「らしさ」を考えてもらうことは、非常にクリエイティブな作業だし、そのこと自体がすでに研修にもなっていますよね。

深澤:上條さんがよく言われる社内のエンゲージメントということですよね。

上條:もともとエンゲージメントには「約束」 という意味がありますが、企業側の視点で言えば、「企業に対する愛着、思い入れ」となると思います。それが昨今では、とくにユーザーとの「つながり」を促進する意味で捉えられることが多いですが、同時に従業員との「つながり」も重要で、ブランドのコンセプトを理解するための教育活動が、とても重要だと認識しています。

チカイケ:結局、プロモーションなども社内の人間が動かすものですものね。

上條:例えば、自動車業界の例を出すと、あれだけ競争の激しい業界で、トヨタはエコカー、日産は電気自動車ということで世界でナンバーワンをとるための戦いをしている。その一方、スバルとマツダは全然違う話をしようとしていますね。相当な危機感があるからだと思いますが、スバルは「安心と愉しさ」、マツダは「Be a Driver」ということで、一貫したメッセージを訴求しています。見ていると、社内でものすごく意思統一がなされているのだと思いますよ。

 

制作者の能力を活かすためにはディレクションが必要。

深澤:マツダも、スバルも広告にタレントを見ませんね。

上條:広告などで必然性があれば、タレントを起用してもいいんだと思います。 ただ多くの企業は必然性とは必ずしも言えないような状態で、タレントを起用していますよね。タレントを使うともちろん有効なこともありますし、便利なこともあります。いろんな意味で。すぐに知名度も上がりますし、広告代理店のビジネスモデル的にもいいのかも知れません。しかし、必然性がない場合は逆にブランドを毀損する場合もあることを考えておく必要がありますね。

チカイケ:ブランドの軸がしっかりないといけませんね。

深澤:広告は表現一発勝負になりがちですよね。

上條:まさにそうで、「なんか話題になるものつくってよ」という指示なら、つくり手もどうしてもそういう思考になりますよね。「インパクト」という言葉、クライアントからよく言われる言葉ですが、この言葉、要注意ですね。思考停止に陥りやすい言葉です。手段を選ばなくなる。制作者たちのスキルを活かすには、この方向でつくってください、という「ブランドの軸」を提示する必要があるんだと思います。この幅の中で、クリエイティブジャンプしてください、というオーダーを出されたら、クリエイティブ冥利に尽きるんじゃないかと思います。「まず、タレントありき」から脱したころで考えて、必然性があれば使えばいいし、必要がなければ、それこそ知恵を絞ってクリエイティブを考える、これもクリエイター冥利だと思います。タレント起用が、ブランド価値にどれだけ寄与するか、きちんと研究する段階にきていると思います。

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IMCの本質は何か。

深澤:1997年に日本でもIMC(Integrated Marketing Communication)の概念が出てきたじゃないですか。いろんな媒体を統合して、マーケティングミックスで戦略を考えないといけませんね、という話だったと思うんですが、上條さんはまさにその頃広告代理店にいたと思うんですが、どんなふうに感じていましたか。

上條:日本では普通のことだと思っていましたよね。1つの広告代理店に、マーケティングも、メディアバイイングも、営業も、クリエイティブもある。海外はそれぞれ別々の会社になっていますから、そういう考え方が出てきたと思うんですけどね。

チカイケ:何をいまさら…というか。

上條:そうですね(笑)、それに近いですよね。焼肉のタレで有名なエバラ食品のブランドステートメントは「こころ、はずむ、おいしさ」です。エバラブランドは焼肉のタレの会社ではなく、食を通じて人と人との絆をつくろう、団らんを提供する会社になろう、と決めています。そのためには具体的にどうするか、ということで、それをそれぞれの事業別にブレークダウンをしていきました。焼肉のタレなどの肉まわり調味料群では「新しい焼肉料理の可能性を広げましょう」と。鍋物調味料群では「鍋料理の可能性を広げ、鍋を通年の家庭料理にしていきましょう」、野菜まわり調味料群では「野菜をもっと身近なものにしていきます」と決めたんです。

チカイケ:それが商品に今度はつながっていくんですね。

上條:まさに。今、「プチッと鍋」などのような、「プチッとシリーズ」商品が売れているんですが、ブランド・コンセプトに沿った商品開発なんですね。簡単に鍋料理が楽しめる、しかも、一年中楽しめる。鍋料理の可能性が広がったわけですね。

チカイケ:コンセプトを貫いていますよね。

上條:エバラさんがすごいのは、商品だけじゃなく、ブランドをとりまくすべてに「こころ、はずむ、おいしさ」を貫いていること。例えば、ホームページ、やイベントはもちろん、本社の入り口でコンセプトを体現するにはどうしたらいいか?を総務の人が本気で考えている。社長がフェイスブックで発言するところまで、そこに結びついているんですよ。

深澤:IMCというと、CMや新聞広告など、目立つメディアを中心に考えがちですが、ブランドのコンセプトをいかにすべてに貫くか、ここに本質がありますよね。

 

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上條憲二(写真中央)
愛知東邦大学経営学部地域ビジネス学科 教授
早稲田大学第一文学部卒業後、第一広告社(現I&SBBDO)入社。マーケティング・プランナーや営業を経験した後、第八営業局長に。執行役員まで務める。2004年インターブランドジャパンにてエグゼクティブディレクターに。大和ハウスグループ、スバル、エバラ、東急グループ、清水建設など日本を代表するさまざまな企業のブランド構築に携わる。2014年から現職。

チカイケ秀夫 パーソナル・ベンチャー・キャピタル 代表(写真右) 
デザイナーの経験を経て、GMOインターネットグループで新規事業などさまざまな事業を経験。2015年よりパーソナル・ベンチャー・キャピタルの代表として活動開始。スタートアップ企業にブランディングを広めることを使命に、数多くのサポートを行っている。さまざまな企業のチーフ・ブランディング・オフィサー(CBO)を務める。

深澤 了 むすび株式会社 代表取締役(写真左)
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター、BRAND THINKING編集長。2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。代表取締役就任。

 




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