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ビジョンがない、ターゲット設定もない戦略に未来はない。

【自治体のブランド戦略から考える本質 第1回】 

 やまなし「水」ブランド戦略

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自治体がブランド戦略を策定する動きが数年前から加速している。しかしそれらの大部分の資料から見えるのは、本質的な「ブランド戦略」というよりも、漠然と地域の知名度や好感度を上げていきたいという思惑が見え隠れする。ただ、通常の企業活動に置き換えた場合、ブランド戦略の骨子を公開するということはまずない。すなわち、あくまで自治体の公開されているブランド戦略の情報をケースとして、ブランド構築への方法論を本質的に考えることを目的とする記事である。

 

ビジョンがない。ターゲットも決められていない。

やまなし「水」ブランド戦略は2016年4月14日に発表されたかなり新しい戦略です。しかし、資料そのものを見ると、全体として当たり前の取り組みを書き連ね、それをなんとなくフォーマットに沿って作りました、という残念な資料になっています。前半、山梨県の水を取り巻く、詳細な事実が多くのページを割いて羅列されていますが、そのような資料の構成はさておき、ブランド構築において大事なのは、まず「ビジョン」です。ブランドを構築することで、どんな未来をつくりたいのか。その意思を明確にしなければなりません。しかし、残念ながら、山梨の「水」が流通することで、そのイメージが広がることで、どういう世の中をつくりたいのか、ということは書かれていません。また、ブランド構築には、ターゲット設定も重要です。山梨の「水」を一番誰に向けて届けたいのか。本来であればペルソナ化するのが定石ですが、おそらく、自治体は何かを限定するのを非常に嫌うので、これができないのではないか、と推測します。ブランド構築において、もっとも重要な2つの要素が欠けているのに、ブランド戦略と謳っている。しかし、これは山梨県だけでなく、実は他の多くの自治体でも同じ現象が見られます。

 

資料のための言葉が並ぶ。なぜワインではなく、水なのか。

ちなみに、この資料には、途中、とうとうと水資源について細かく書かれているデータの部分がありますが、正直、そこまで細かく書く必要があるのか疑問です。また途中でアンケート調査の項目がありますが、資料全体を通して感じるのは、「水に関して、いいデータが出ているから、水でブランド構築しよう」という意思です。しかし、山梨で言えば、ワインやぶどうなど、すでに「ブランド」が確立していると思われるモノがあるにも関わらず、なぜ今「水」をここでブランド構築するのか?という疑問もあります。もしこれがワインでの戦略であるなら、世界的にも認められてきた長所をさらに伸ばすことで、「世界の甲州」の地位をより強くすることにもなるわけです。だからこそ本来は「水」をブランド化することの意思をもっと強く、そして端的に示さねばならなりません。また、「戦略展開の目標」として、「育水日本一やまなし」と掲げています。おそらくこれは「コンセプト」や「ブランドスローガン」に近い位置づけなのだと思いますが、ターゲットが不在のため、山梨県の取り組むべきことを宣言したに過ぎないものになってしまっています。

 

ビジョンなきブランド戦略の行く先。

さらに「効果的な戦略推進の取り組み」では、こう書かれています。「戦略を実効性のあるものにするためには、関連する施策・事業の実施状況等について把握・検証し、必要に応じて見直し・改善を図っていくことが重要です。このため、庁内推進体制を確立し、施策・事業の進行管理を行い、効果的な戦略展開を図っていきます。」・・・日本語ですから、書かれていることはもちろん、わかります。しかし、本来必要なのは、最低限一歩進んだこの先の中身。これでは、だからどうするかを書かねばならないところに、当たり前のことを羅列しているに過ぎません。この項はこのレベルの「取り組み」が続きます。

こうして見ていくと、「ブランド戦略」と書かれていますが、結局何がしたいのか、何をするのかが明確になっていません。山梨は確かに「水」が豊かで、ミネラルウォーター発祥の地になったと、資料にも書いてありますが、せっかく資料を作ったものの、結局何もなされないままに、何も変わらず時が過ぎていくことになることが予想されます。また、このような戦略に高額な予算を計上し、外部の会社に委託する自治体もあるかと思いますが、もしそうだとしたら、何のための予算だったのか、とも指摘することができるでしょう。「ビジョンなきブランド戦略」は、羅針盤を持たずに航海するようなものなのです。

 

文:BRAND THINKING編集部




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