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2017.01.25

日本企業のマーケティングが近視眼ではいられなくなる日がやってくる。

早稲田大学ビジネススクール教授

【永井 猛のブランドづくりの近道 第3回】

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ブランド戦略に関する注目の高まりや競争が激化するにつれ、ブランド戦略はどの企業にとっても無視できず、例えばCMOと同位置でCBOを置くなど、ブランドをマーケティングと並ぶ経営の上位概念として捉える動きも増えている。一部の大手企業だけでなく、ブランド戦略をあらゆる企業が導入していくために留意すべき点は何か。学術的なアプローチだけでなく、あらゆる企業のコンサルティングなども手がけてきた永井猛教授に聴いた。

 

オピニオンリーダーを捕まえろ。

——ブランドを立ち上げた時に、どうやってファンを獲得していくかについて、先生は「オピニオンリーダー理論」を唱えています。

私の言う「オピニオンリーダー理論」は、ブランド導入の初期に、オピニオンリーダーに到達できたブランドは長続きしやすい、という理論です。これは1962年にアメリカのスタンフォード大学のエベレット・M・ロジャースの「イノベーター」理論を発展させたものです。イノベーター理論は、新しいもの好きの上位2種類の人間「イノベーター」と「アーリーアダプター」の上位16%に普及させることが、その後大きく広がると説いたものです。しかしいくらこの2者に導入されたとしても、「あいつが使っているなら使いたくない」と言われてしまう人に使用されたら、広がりません。「イノベーター」や「アーリーアダプター」に属する人で、「あの人が使用しているのであれば、自分も使ってみたい」と思われるような人、つまり周囲への影響力のある「オピニオンリーダー」に到達することが、その後ブランドが長続きする最初の要因であると考えています。どうしても日本企業は怖がって、ターゲットのボリュームゾーンを狙いがちですが、それでは影響力のある人間は使わないので、返ってターゲットは減少してしまうことになるのです。

 

チャレンジしない保守的な人が増えた。

——先生が「オピニオンリーダー理論」を唱え始めた2010年頃と変わってきたことはありますか。

あの頃からすでに変わりつつあったのだと思うけど、地方と首都圏でオピニオンリーダーの像は異なると思います。職種で言えば、地方なら典型的には夫婦共稼ぎの公務員、教員、県庁職員。東京だと、商社や銀行などの人になると思います。東京は自治体の職員の影響力はそれほど大きくないと思います。問題なのは、本を執筆した頃と違って、圧倒的にチャレンジしない人が増えた部分だと思います。例えば、早稲田大学でも一般入試で入学してくる人は今、半分くらいになっています。あとは推薦や付属、係属の高校から。推薦が増えると、一般入試を経ないので、自分の学力レベルよりも、高い場所にほぼ無試験で入れることになるんです。これがどんどん安全で堅実な選択をする人が増えるひとつの要因になっていると考えています。以前は、浪人して早稲田に入ってくる人は6,7割いました。国立大学を落ちて悔しい思いをして早稲田に来る人もいました。チャレンジのDNAを大人になる一歩手前の18歳で養うことは、人生の中で大きな影響力を及ぼすと思います。学部で起業家養成の授業も持っていますが「やってみろ!」と言っても、リスクを取って起業する人はほとんどいません。

 

完全にコモディティになってからでは遅い。

——リスクをとらない、というところで言うと、日本企業のマーケティングは短いスパンでの結果を求める傾向が強いような気がします。

マーケティング的に見て、日本企業と欧米の企業の大きな違いは、マーケティングの部署が組織のどこに位置するかです。日本企業の場合、営業のサポート部門になっているところが多い。だからどうしても、短いスパンでの結果を追い求める近視眼的なマーケティングになってしまいます。戦略というよりは、戦術に近い部分を担っていると言えるでしょう。一方、欧米企業のマーケティング部門は、他のすべての部門を統括した形で存在します。営業も、製造も、PRも、広告もぜんぶです。だからセールストーク、仕入れ値、PR媒体、広告予算など、すべてをコントロールしています。学術的にも、マーケティングというのは大きな概念です。ブランドも広告もマーケティングの中に属しています。どんな大学院でもマーケティングは必修科目ですから、その重要性が見て取れると思います。日本企業は伝統的に製造部門が強く、製品の技術力で勝ってきた歴史があります。欧米が日本よりも先に成熟した社会を迎えたので、マーケティングが発達しました。日本企業にはまだ若干、製品に優位性があるのでこれで行けると思っているフシがある。でもこれから先、もっとグローバルの戦いや成熟化が進んでいって、完全にコモディティになったときに、どうなるか。そこから気づいたのでは遅いのです。

 

聴き手・文:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城

 

第5回「一番早く、こだわりを持って、粘り強く取り組め。」

第4回「グローバルで見れば、ターゲットを絞っていない企業なんてない。

第2回「商品にはライフサイクルがある。理念にはない。

第1回「風を見極めろ。やらなければ一生、ブランドはできない。

 

永井猛

 
永井 猛

早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)教授。早稲田大学第一商学部卒業、同大学大学院商学研究科修士修了。同大学大学院商学研究科後期博士課程単位取得退学。1980年にビジネススクールの前身となる、早稲田大学システム科学研究所に着任以来、一貫して社会人教育に携わる。企業へのアドバイザー、コンサルティングも豊富に手がける。専門はマーケティング。主な著書に「富と知性のマーケティング戦略」五弦舎など。




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