経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

今、100%の一貫性があるか。その連続が強いブランドをつくる。

【Yenomのブランド論対談 第3回】<最終回>

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仮想通貨の世界で、初めてビットコインを使う人をターゲットにしたウォレットアプリを開発している会社がある。その名も、「Yenom(エノム)」。安心や安全を謳うサービスが多い中、「遊ぶ」をキーワードに据える異色の存在だ。ビットコインという新しい産業への挑戦と同時に、社名・サービスのネーミングをはじめ、ミッションやバリューの言語化を行い、ブランディングを進めた。その背景や今後の目指す姿について、CEOの宇佐美氏(写真右)と、ブランディング・プロジェクトを主導したPARK代表取締役でコピーライターの田村氏(写真左)に訊いた。

 

聴き手:BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城

 

安心・安全よりも、ワクワクできるかどうか

——–理念の言語化を進める中で、どんなことを大事にしましたか?

田村:ミッションもバリューも同じですが、彼らが世界一の会社になっているという未来から逆算して、今、その道筋をどうつくれるかを大事にしました。視座をどこに置くかが重要で、それをとことんまで上げていくことを個人的に考えていたんです。世の中的な背景でいうと、ビットコインという領域がより成長する上で大切なのはセキュリティとか安心感とか、そういうものだろうと思ってはいるんです。業界的に向かい風な印象もありましたし。ただもう少し長い目で見ると、世の中の大きなインフラになり得るものだし、安全や安心だけを訴求してもあまり意味がないなと思ったんです。それよりも、世の中はこんなふうに変わっていくんだというワクワク感をどう演出できるか。そうしたら遊ぶという言葉も、一見すると不謹慎な言葉かもしれないですが、あえてそれを使うことが逆に良いなと思ったんです。

宇佐美:プロフェッショナルってやっぱりすごいなと思いましたね。正直、コピーライティングっていうものをあまり分かっていなかったんですよね、頼む前は。自分たちが思っていることを、言葉を整えてもらうというイメージだった。それだけのためにお金を払うのかと思っていたんです(笑)。ただお願いしてみたらイメージと全然違いました。実際のアウトプットはこの短い1行ですけど、そこに至る過程の中で出てくる引き出しの数は圧倒的。アウトプットについても100%の納得感があります。自分たちだけでは95%までいくことはできても、残りの5%は埋められなかったと思います。

田村:会社って一つの人格じゃないですか。でもその人格って、多重人格だと思うんです。いろいろな側面があったりしますから。ただ、特に採用のことを考えると、この人(会社)どういう人なんだろうと思った時に、それがあまりにも多重人格だと分かりにくいですよね。様々な側面を持つ中でも、一番濃度の濃い面を打ち出して、会社の色付けをしていくというのがブランディングのあり方なのかなと思います。今回いろいろと関わる中で、感情移入してしまっている部分はかなりあるんですけど、会社の人格で求心力を持てるってすごく少ないと思うんですよね。仮に今後、事業が多岐にわたったり方向転換したりしても、この会社にいたいと思えるかどうかが大事なポイントで、Yenomはそれをしっかりつくれる会社だと思います。

 

今ではなく未来を見て、太い一貫性をつくる

——-クリエイティブについてはどのようなことを意識されましたか?

田村:僕らの仕事の受け方として、ネーミングやミッション・バリューのようにコピーだけを受けるケースもあれば、ロゴマークをつくったり、コーポレートサイトをつくったり、サービスのUI、UXまで携わるケースもあります。今回はコピーライティングで入って、社内にデザイナーがいてという感じだったので、ある程度デザインの部分はお任せという感じではありました。ただ、ある程度「人」が見えるデザインが良いだろうとは思っていました。サイトに関しても、採用メッセージのページは「ラブレター」というラベリングで宇佐美くんが語っていますし。サービスの方も「とびきりやさしい」というタグラインがあるので、それをいかに体現するか。小難しさの逆を行くというところの着地になっているのかなと思いますね。

宇佐美:僕は引き算の考え方を意識していました。付け加えようと思ったらいくらでも付けられます。それはホームページのデザインもそうだし、UIにしても機能にしても、いくらでも付けられてしまう。でもあえて付け加えないと決めていることも多いんです。どこまで削れるかということはすごく意識していますね。今のユーザーから要望をいただくことも多いんですが、それを実現したら、お母さんみたいな人もそれを使うのかと考えたりはします。その機能を全員が使うようにするべきなのかとか、実はこんなリスクがあるのではとか。そうしたことを多面的に考えて、サービスのポジションや価値を明確にするためにも、あえて引き算を大事にしています。それでいろいろ言われたりはしているんですけど(笑)。

田村:たとえばTwitterにそういったコメントがあった時に、しっかりと返事をしているのがすごいなと思いますね。形式的な返答ではなくて、こう考えているからこそ、このやり方をしているんだと純度の高い言い方でストレートに伝えている。ユーザーファーストっていろいろな解釈があると思うんですけど、言われたことを真に受けてそれを叶えることだけがユーザーファーストじゃないと思うんです。本当に必要なものを考えて、なおかつ自分たちが思っていることをしっかりと伝えていくというコミュニケーションをとるスタイルは、一緒に働く仲間も自主性を持って働いていけるんじゃないかなと思いますね。一貫性があってすごくいいなと思います。

宇佐美:一貫性は持ちたいですよね。一貫性への渇望は英単語のアプリをメインにしていた頃からありました。「世界一の会社になりたい」と言っているのに、英単語の事業だけをやっている状態は果たしていいのかと。一貫性がないなと感じていたんです。自分で言っていることが食い違っているという状態が苦しかった。そんな中でビットコインに出会い、「あ、これだ」と思えたんです。これだったら一貫性が持てる。そう思えたんです。

田村:今回のプロジェクトで、一貫性にもいろいろ太さや細さがあるんだと僕自身も考えましたね。それがあまりに細いと自分たちの首を絞めることになったり、可能性を狭めてしまうことになってしまうと思うんです。ビットコインという産業は、まだどういう発展を遂げるか未知数の部分がありますよね。だから、細い一貫性だと、ゆくゆくそれにすごく縛られてしまうんじゃないかと思ったんです。できるだけその一貫性を太く持つことの大事さに配慮した。ちょっと話はズレるかもしれませんが、たとえばバリューひとつとっても、「Danshari.」だけ一貫性がないんですよね。基本的に英語の2ワード構成の中にあって、これだけ日本語で特殊。あえてちょっとした違和感や遊びの部分をもたせるというか。遊びを内包した上での一貫性が重要だなと感じたんです。

宇佐美:今、聞いていて思ったのは、将来に渡ってずっと一貫してこのミッションでいくみたいなことが一貫性だとは思っていなくて、今考えていることと、発信しているメッセージがしっかりと筋が通っていることが大事だと思うんです。考え方や価値観がアップデートされることは絶対あると思っていて、その時点で100%一貫していることが重要だと思うんです。今、僕らが出せる100%の想いと、言っていること・やっていることが全部揃っているのがこのミッションであり、バリューであると思う。それが出せたというのは大きな成果だと思います。

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常に最前線に立ち、遊べる仲間を増やしたい

——-今後の展望を教えてください。

宇佐美:ビットコインで面白いことができるなら、事業として注力するかは別として、全部チャレンジしてみたいと思っています。ビットコインで何ができるのか、どう便利になっていくのかはまだ未知数なところもあって。いわば、ここからいろんなものが築かれていく砂場みたいな状態だと思うんです。一つのところに留まるのではなくて、ビットコインの最前線にずっといたいですね。

田村:ビットコイン熱が高まった状態をどう設計していくかが大事だなと思っていて、そこで一番声の大きな存在がYenomであり、宇佐美くんであればいいなと思っているので、PRや広げ方の部分で今後もお手伝いできたらと思っています。今、砂場という例えがありましたけど、「ビットコインを遊び場に」と謳っているので、自分たちが面白いなと思って、やってみて、そこに突っ込んでいくというのが理想的。マーケティングの観点で予測をしてというよりも、偶発的な要素も絡めながらやっていくことも必要だと思います。採用に関しても、良い会社に入社をするという考え方より、プロジェクトに参加するようなテンションで来てもらえたら良いと思うんです。それにはコミュニケーションの仕方も重要で、宇佐美くんが表に立ちすぎても会社としての自由度が失われかねないし、一方で、彼の求心力が一緒に働きたいと思わせる力になることもあると思います。それは本当にさじ加減の世界だと思うので、いい塩梅のコミュニケーションをお手伝いできたらと思っています(笑)。

宇佐美:もともと、「ビットコインで、世界を遊ぶ。」というフレーズは、ビットコインという新たなテクノロジーを自分たちが遊び尽くそうという想いが強く、どちらかというと社内に向いたものでした。ただよく考えると、まだ世の中にはビットコインという領域に精通している人が少なすぎると思っています。ビットコインに触れて、遊ぶ人が増えれば、産業としてさらに加速するはず。だからこそ、自分たちだけではなくて、色々な人がビットコインで遊べるようにしていきたいですね。今展開しているようなウォレットをはじめとして、ビットコインの開発をしやすくするためのツールをつくったりと、ビットコインが使いやすくなるような環境づくりに貢献することも、やっていければと思っています。

(おわり)

 

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宇佐美峻(写真左)

Yenom(エノム) CEO

2014年、大学在学中に株式会社mikanを設立。ゲーム感覚で英単語を学習できる英単語学習アプリ「mikan」をリリースし、約250万ダウンロードを突破する人気アプリへと成長させる。2017年にビットコインの可能性と奥深さに気づき、2018年3月「とびきりやさしいビットコイン・ウォレットアプリ Yenom」をリリースし、同年4月に株式会社Yenomに社名変更。「ビットコインで、世界を遊ぶ。」というミッションを掲げ、水や電気、インターネットのように、ビットコインが生活の一部となるための環境づくりを目指す。

Yenom

 

田村大輔(写真右)
1982年生まれ。2004年よりコピーライター廣澤康正氏に師事。ユニクロ、ロッテリア、ミズノなどのブランディング/プロモーションに携わる。2012年、面白法人カヤック入社。コピーライター専属部署「コピー部」の立ち上げに参画。サービス立案・運営からキャンペーンまでを担当。2013年、オレンジ・アンド・パートナーズ入社。プランナー/プロデューサーとして、企業ブランディングや地域活性プロジェクトを担当。2015年、クリエイティブエージェンシー株式会社パーク設立。「愛はあるか?」を理念に、最近ではスタートアップ系のブランディングに力を注いでいる。

PARK Inc.




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