経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説|ブランド シンキング

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経営に正しいブランディングを。わかりやすく解説

編集とは、心に届く順番を考えること。#1

【コルクのブランド論 第1回】

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出版という伝統的な業界で、新しい風を吹かせている企業がある。佐渡島氏は、講談社で次々と大ヒット作品を手がけた編集者。その佐渡島氏が、講談社を飛び出して2012年につくった企業がコルク。「編集とは、伝わる順番をしっかり考えること。クリエイターの側からそれを考える集団、大きな軸をつくりたかった」と話す佐度島氏。多くの売れっ子クリエイターを抱え、ヒットを繰り出し続けるコルクの土台となる理念や今後の展望について聴いた。

 

世の中に伝えていく順番が、おろそかにされている。

——–もう何度も聴かれているとは思うのですが、コルクを立ち上げようとしたきっかけについてまずは教えてください。

世界的には、クリエイターのエージェント会社というのはわりと普通なんです。クリエイターと同じ目線で、クリエイターやその作品をどうのように世の中に伝えていけばいいのかを考える役割の人がいます。でも日本には出版社側にしかいないんです。世の中に伝えていく順番というのはとても大事で、日本ではこれがおろそかにされていると思います。しかし、それこそが編集者としての仕事であるとも思っています。例えば、ある食材を一番初めに焼くのか、煮るのか、蒸すのか。順番を変えるだけでまったく違った料理になるはずです。長期的に見てクリエイターの人生をどう築くのか、そして今この作品をどう売るのか、という思考軸で考えると、そのクリエイターごとに世の中に伝えていく順番は自ずと変わってきます。この順序をクリエイターの側で考えられる人が日本にも必要で、もっと増やしていかなければならない。僕は10年間、講談社で編集者をやっていましたが、ずっとこの役割が社会的に必要だと思っていたんですね。もちろん、講談社にいながら、それができないかとも考えました。でもやっぱりプラットフォーム側の論理が強くなってしまう。媒体としては、作家の入れ替えは絶対に必要です。それが媒体を強くします。でも作家の人生、と考えると、新陳代謝はありえない。才能がある人をどうプロデュースしていけばいいのか。それを真剣に考える人がもっとたくさん必要だと思ったんです。

 

膝から崩れ落ちるような感動を届けたい。

——-佐渡島さんが並々ならぬ決意でつくったコルクは、理念に「心に届ける」を掲げています。この言葉に決めた背景や込めた意味を教えてください。

この質問が出ること自体、世の中に浸透しにくい言葉で定義が甘かったと感じています(笑)。この想い自体は自分の心の中にあって、それを1年くらい前に言語化しました。感動して、膝から崩れ落ちるってことって、本当にあると思うんです。「心に届く」と、そういう風になると思っています。これもどのように情報を伝えていくのか、がとても重要で、物語の進行はもちろん、プロモーションの順番まで気を遣わなくてはなりません。例えば、プロポーズをする場合、指輪を渡すときに、「100万円の婚約指輪を渡すからね」と言って渡したのでは興ざめですよね。オシャレなレストランを予約して、指輪が予想外のところから出てきたりして、半年間遊ぶのを辞めてて、みたいな話の流れで渡すと、感動するかもしれない。この場合、その出来事において、プロポーズをする、指輪を渡すという要素は一緒なんです。でも順序が違うだけで結果が変わる。「心に届ける」というのは、膝から崩れ落ちるような感動を、作品の力とITの力を使って、生み出したいと思っています。作品の持つ世界観を届ける方法を、多様化させたほうが、より伝わるし、伝わる相手も増えると思うからです。この言葉は、僕の中にああった思想ではあるのですが、実際の言語化はコピーライターと一緒にしました。僕だけで言語化すると、それが本当に正しいのか確認ができません。他者に言葉にしてもらって、僕の考えとのズレを少しずつ調整して、社員で話し合って。そんな繰り返しを半年くらいして出来上がりました。

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理念を決めることは、KPIを明確にすること。

——-会社設立4年で、コピーライターの力を借りながら理念を言語化する、という発想は、なかなかないと思います。

一流のクリエイターでも編集者って絶対に必要なんですよ。自分を客観的に見てくれて、どうすれば世の中に訴えかけられるのか。普段の関係性で言えば対話する相手なのですが、そういう中から、力のあるものが生まれていきます。このあたりは編集者としてずっとやってきたので、最初から感覚として持っていたものかもしれません。最初会社を始めたときはこんなふうに何人も社員が入ってくれるとは正直思っていませんでした。でも少しずつ会社が大きくなってくると、僕自身が予想もしていない成功を社員にしてもらいたい、と思うようになりました。社員の力でこれまでなかった5万円の売上が立つということのはあります。その5万円が理念に基づいて生まれたものなら、大成功、そうでなければ、再挑戦。会社の方向性を明確にすることで、みんなが働きやすくなる。つまり理念を決めるということは、会社のKPIを明確にするということなんだと思うんです。売上はわかりやすい指標ではありますが、会社にとって本当に重要なのは、そのプロセスにある小さな成功に気づけるようになることです。

 

第2回は9/19(火)に公開します。

 

聴き手・構成: BRAND THINKIKNG編集部 撮影:落合陽城

 

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佐渡島庸平
株式会社コルク 代表取締役社長
twitter:@sadycork
2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを設立。現在、漫画作品では『オチビサン』『鼻下長紳士回顧録』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『テンプリズム』(曽田正人)、『インベスターZ』(三田紀房)、『昼間のパパは光ってる』(羽賀翔一)、小説作品では『マチネの終わりに』(平野啓一郎)の編集に携わっている。




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